雨の音を聞きながら眠りにつき、雨の音で目が覚めた今日。

 

明日からは寒くなるそうだ。最後にと思って、お気に入りの短いパンツをはいてきた。

 

大学までの道はすっかり秋に色づいていた。赤や黄色に染まった地面を踏みながら歩いていく。膝のあたりが内側から冷えていく。今日でこのお洋服もおしまいかな、タイツを履けばもう少しは着れるかな。

 

授業を受けて校舎を出ると、雨はやんでいた。ひんやりと冷たい空気は、季節の入れ替わりを感じさせる。私はこの季節の境目が好きだ。

春から夏に、夏から秋に、秋から冬に、そして、冬から春に。

移り変わっていく季節は、いつもその時々の香りを置いていく。

 

でも、ここには私の好きな香りがない。

 

雲の流れは速かった。隙間から顔を見せる青空と、細く差し込む陽。

それを隠すように、また灰色の雲が迫ってくる。

 

湿った葉の匂いは、暮れていく1年を思い出させる。年々、「1年」が早くなっていく。

 

60日もすれば、私はまた新たな決心をするだろう。

 

なんとなく寂しくなるのは、もうじき過ぎ去ってしまう1年に対する未練なのか。

それとも、やってくる1年に対する漠然とした期待と希望と、少しの不安なのか。

 

不安はない。未練もない。そう思えるのは、いつぶりだろう。

 

私の好きな香りがないこの場所で、それでも生きていきたいと思える。

 

ふと顔を上げると、大粒の雨が窓を叩きつけていた。